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日外会誌. 99(5): 285-290, 1998


特集

呼吸器悪性腫瘍の最新の治療方針

2.非小細胞肺癌の分子生物学的知見に基づく治療方針

京都大学胸部疾患研究所 胸部外科

田中  文啓 , 和田  洋巳 , 人見  滋樹

I.内容要旨
近年の分子生物学の進歩により癌の生物学的特性が次第に明らかとなるに従って,症例個々の腫瘍生物学的特性に応じた癌の治療法の選択が求められるようになってきた.本稿では,分子生物学的知見が非小細胞肺癌の治療において果たす役割を,1)遺伝子診断への応用,2)治療指針としての分子生物学的指標,3)遺伝子治療への応用,4)制癌剤の新しい標的,に分けて考察した.p53は最も研究が進んでいる分子生物学的標的であり,p53遺伝子異常を指標とした肺癌の早期診断,野生型p53遺伝子を用いた遺伝子治療等が,米国ではすでに治検段階に入っている.制癌剤の標的としては,癌の浸潤・転移に関与する腫瘍血管新生が最も注目されており,血管新生阻害物質やマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤等が実用化されつつある.現時点ではいずれも研究段階ではあるが,近い将来にこれら分子生物学的知見に基づく治療法の臨床応用が期待される.

キーワード
肺癌, 遺伝子診断, p53, 遺伝子治療, 血管新生阻害剤


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