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日外会誌. 99(4): 229-233, 1998


特集

肝細胞癌外科治療の現況

6.術前・術後療法

大阪府立成人病センター 第1外科

今岡 真義 , 佐々木 洋

I.内容要旨
癌を手術によって根治的に治癒させうるために,一時期拡大郭清が試みられ,その後に,QOLも考えあわせた縮小手術へと移っていく道を辿るのが常である.
肝細胞癌の場合,年々増加し男性死因の3位になっているが,この癌の特徴の一つとして慢性肝炎や肝硬変という障害肝に発生することが大半であり,当初から残存肝の予備能且つQOLを考え合わせた肝切除の至適範囲が規定され,拡大郭清は稀であった.
肝細胞癌に対する唯一の根治療法でもある肝切除は,肝細胞癌の約30%に行われているが,50%以上が肝切除後3年以内に再発する.再発の80%以上は肝内再発であり,肝内再発に的を絞った適切な局所療法を行えば,長期生存することが可能になっている.しかし,手術療法の終局の目的は,再発なく生存させうることであり,極力肝切除後の再発防止を図らなくてはならない.
手術後,癌再発の防止対策としての補助療法には,全身化学療法や動注療法,免疫療法(免疫化学療法),照射療法などがあるが,肝細胞癌肝切除の術前に施行される補助療法の多くはTAEである.しかし,この術前TAEの有効性については疑問視されてきたが,5cm越す大きな肝細胞癌には有効であるという成績がみられ,適応例を選択すれば有効な手段となりうる.
肝切除術後の補助療法としての全身制癌剤投与や動注療法の有効性については,明確な回答は得られていない.しかし,最近Mutoらは,肝細胞癌肝切除後のretinoidの使用は,術後肝内再発を著明に抑制し,その抑制は2次発癌の抑制によるものであると報告した.この報告から類推すると,肝内再発の相当数が2次発癌によるものであると結論されることにもなり,肝細胞癌の治療法そのものを根本的に考え直す時期にきているのかもしれない.

キーワード
補助療法, 術前 TAE 療法, 術後レチノイド療法, 動注療法, 免疫化学療法

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