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日外会誌. 99(3): 164-170, 1998


特集

外科栄養の進歩

5.小児外科領域

九州大学 医学部小児外科

水田 祥代 , 山内 健

I.内容要旨
今日の小児外科疾患における治療成績の向上は,術前術後の栄養管理によって支えられていると言っても過言ではない.しかしいまなお短腸症候群やヒルシュスプルング病類縁疾患などの腸管不全の治療成績は満足のゆくものではなく,近年の栄養管理に関する研究は腸管不全の管理に焦点を当てながら進んできた.
腸管不全の栄養管理を支えているのは中心静脈カテーテルを用いた静脈栄養であり,器材の発達はめざましいが,カテーテル敗血症などの合併症は必ずしも減少していない.これを減少させるためには栄養サポートチームによる管理が必要である.また静脈栄養が長期化するにつれカテーテルに伴う静脈血栓症も問題となってきた.静脈血栓症は輸液ルートの枯渇を招き静脈栄養の制限因子となるが,いまだ有効な打開策は見いだされていない.
もうひとつの腸管不全の栄養管理における問題点に肝障害があるが,その原因はいまだ不明である.近年,その原因のひとつとしてbacterial translocationが注目されているが,いまだ実証はされておらず,現時点では静脈栄養による肝障害を防ぐための手段はcyclic PNと経腸栄養である.肝障害の病因についての研究は近年減少傾向にあるが,腸管不全では肝不全は生命予後を左右する重大な合併症であり,さらなる研究が必要である.
近年,栄養治療の手法があまりにも一般化したがゆえに関心が薄れ,ビタミンB1欠乏のような医原性の合併症も発生しているのが現状である.今一度,原点に戻り,栄養管理を基本から見つめ直す時期にきていると思われる.

キーワード
栄養管理, 静脈栄養, 経腸栄養, 中心静脈カテーテル, 小児


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