[書誌情報] [全文PDF] (1075KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 99(3): 144-153, 1998


特集

外科栄養の進歩

2.栄養評価に関する進歩

大阪大学 医学部小児外科

山東 勤弥 , 岡田 正

I.内容要旨
近年の栄養療法の進歩は著しく,それに伴って栄養評価の重要性が広く認識されるようになり,栄養評価も著しく進歩したが,本稿ではその進歩の歴史を以下の3つの時期に分けて述べることにする.
1)黎明期:1930~1959年
1930年代に入りはじめて国勢調査で栄養評価が使用され,1930年代後半には外科手術後に体重減少と低蛋白血症が見られることが判明し注目されていた.1950年代後半より食生活と成人病の関連性が問題となり,栄養学が治療法のひとつとして見直され,必要から理想体重表が作られた.同じ頃,経腸栄養剤の作成・応用がなされ,また静脈栄養法の研究が始められた.
2)確立期:1960~1979年
静脈栄養が確立され経腸と並んで2つの栄養療法が確立・普及していった.患者の栄養状態が短期間に回復する機会が多くなり,栄養評価の重要性が認識されるようになり,次々と新しい概念(StuntingとWasting, MarasmusとKwashiorkor, Body composition)が誕生し,また評価方法(Clinical assessment,標準マニュアル)の検討がなされ,発展途上国での栄養障害と入院患者の栄養状態の評価に応用された.わが国では完全静脈栄養研究会,成分栄養研究会が発足し,また身体計測による栄養評価がなされ,日本人の身体計測値の標準値が設定された.
4)発展期:1980年以降
様々な栄養パラメータが提唱されてきたが,複数のパラメータを組合わせて総合的に判断する検討(Prognostic nutritional index,Cluster analysis)や生理的機能面を重視する検討(Muscle fuctional test)がなされ始めた.またこの間,高度先進科学技術を駆使した大掛かりな装置が開発応用されるようになり,Body compositionの考えを再構築するFive-level modelが考え出され,反対に大掛かりな装置を必要とはしないClinical assessmentの流れのSubjective global assesmentの考えも確立された.このように栄養評価は著しく進歩したが,栄養評価への認識不足も問題とされ,医療スタッフの栄養教育も重要であると考えられている.

キーワード
栄養評価, 栄養アセスメント, 進歩の歴史


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。