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日外会誌. 99(2): 90-95, 1998


特集

心臓再手術の現況

7.小児弁疾患の再手術

東京慈恵会医科大学 心臓血管外科

黒澤 博身

I.内容要旨
小児弁疾患の再手術の問題点は小児期心疾患に対する外科治療の遠隔期に問題となるGUCH(grown-up children)と共通である.特に人工弁置換術後のGUCHは成長にともなうprosthesis-patient mismathchを解消するために再手術に際して人工弁のサイズアップという重要な問題を抱えている.狭小弁輪を伴う先天性大動脈弁狭窄症に対しては乳児期に交連切開術などを行った後の再手術としてKonno手術が行われていたが,抗凝固療法不要などの点からRoss手術が第一選択として取り入れられるようになった.Ross手術は心機能面でも優れており,Konno手術後の再手術の選択肢にもなり得る.ただし,Ross手術における右室一肺動脈間再建にはhomograftの導入が望ましい.先天性僧帽弁狭窄症の交連切開術後は再手術時の人工弁サイズ,あるいは再人工弁置換に際しての人工弁のサイズアップの問題がある.幼小児期は19~25mmの人工弁しか使用できないことが多く,成人に必要な27mm以上弁への再弁置換が必要になる.心内膜床欠損症や単心室症で房室弁の修復を受けた後に再手術を行う際には可及的に形成術で対応すべきであるが,時に人工弁置換術を行わざるを得ないことがあり,房室間刺激伝導路の損傷を避けるなどの注意が必要である.右心系の半月弁である肺動脈弁の問題はFallot四徴症の遠隔成績からみて,人工弁を用いずとも一弁付パッチで充分に対応できることが明らかになっている.小児弁疾患の再手術に際してはhomograftを充分に利用できる体制が待たれる.

キーワード
grown-up children(GUCH), 弁疾患, Konno手術, Ross手術, homograft


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