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日外会誌. 99(2): 78-83, 1998


特集

心臓再手術の現況

5.完全大血管転位症根治手術後の再手術

1) 福岡市立こども病院 心臓血管外科
2) 九州大学 医学部心臓外科

益田 宗孝1) , 安井 久喬2)

I.内容要旨
完全大血管転位症(TGA)の手術としては,心房内血流転換術のSenning手術やMustard手術,心室内血流転換術のRastelli手術,解剖学的根治術の動脈スイッチ手術(Jatene手術)が根治術として施行されている.心房内血流転換術では上大静脈閉塞や肺静脈閉塞によって再手術が必要となることがある.Rastelli手術では心外導管の狭窄による再手術が不可避と考えられており,再手術の際に,conduit bedを後壁として使用するDanielson法が再々手術を回避する術式として報告されている.また,初回手術時に自己肺動脈と右室切開部を吻合し右室流出路の一部を自己組織で再建するREV法は再手術の頻度を低下させ得る術式として,その適応が広がっている.動脈スイッチ手術はTGAの根治術の主流となっているが,肺動脈狭窄,大動脈弁逆流,大動脈弁上狭窄等による再手術の頻度は決して低くない.特に肺動脈狭窄の発生頻度は高く,再手術症例の半数以上を占めている.肺動脈狭窄の発生に関しては,肺動脈の再建法が大きく関与することが判明しており,最近では,新肺動脈と末梢肺動脈を直接吻合する方法や,Valsalva洞の欠損部位を自己心膜のsingle pantaloon patchにて補填する方法が遠隔期の肺動脈狭窄を防止する術式として汎用されている.大動脈弁逆流は軽度なものが多いが,高度な症例では弁置換術が必要となり,その際,大動脈弁への到達には片側肺動脈を切断する方法が有用である.大動脈弁上狭窄は大動脈弓異常合併症例に多く認められる.

キーワード
完全大血管転位症, Senning手術, Mustard手術, Rastelli手術, Jatene手術


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