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日外会誌. 99(1): 2-7, 1998


特集

広範囲熱傷治療の現況

2.広範囲熱傷の病態の推移

帝京大学 救命救急センター

池田 弘人 , 小林 国男

I.内容要旨
広範囲熱傷における生体反応は受傷直後の血管透過性亢進と循環血液量減少性ショック,代謝面での代謝率の上昇,窒素喪失,蛋白異化亢進,感染や手術により生ずる全身性炎症反応と特徴づけられる.急性期の血管透過性の亢進にはヒスタミンや種々の血管作動性物質(セロトニン,ブラジキニン,プロスタグランディン,ロイコトリエン,PAFなど)が関与している.急性期以後は,さまざまな組織から分泌されたサイトカイン(IL-1,IL-6,TNFなど)やLipid mediator(プロスタグランディン,ロイコトリエン,PAFなど)が複雑なネットワークを形成して,Hypothalamoadrenal axisの活性化に強く関与し,代謝面では,カテコラミン,コルチゾール,グルカゴンなどの分泌増加により,糖新生,蛋白異化亢進,脂肪分解,インスリン抵抗性高血糖を呈し,循環系では「refilling現象」を生じ,Hyperdynamic stateとなり,循環血液量維持のためのレニン-アンギオテンシン系の賦活,ADH(抗利尿ホルモン),ANP(心房性ナトリウム利尿ホルモン)の産生・分泌がおこる.また,生体防御能の低下,特に細胞性免疫能の低下もみられる.経過中,感染や手術などを契機にさらに種々のChemical mediatorが産生遊離され,非常に強い全身性炎症反応がおこり,SIRS(全身炎症反応症候群),ARDS(成人呼吸促迫症候群),MODS(多臓器不全)の病態を呈し,死に至る場合もある.サイトカインとくに血清IL-6の変動は非常に鋭敏で広範囲熱傷患者の治療経過中の全身的変化を適宜捕えることができる可能性がある.

キーワード
熱傷, 病態, サイトカイン, 異化亢進


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