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日外会誌. 98(12): 1013-1017, 1997


特集

最近の新生児外科

7.腹壁破裂・臍帯ヘルニアの治療方針

愛知県心身障害者コロニー中央病院 小児外科

長屋 昌宏 , 加藤 純爾 , 新美 教弘 , 田中 修一

I.内容要旨
45例の腹壁破裂と85例の臍帯ヘルニアの経験をもとに一般概念の変化と治療法を中心に論じた.腹壁破裂の悪条件に対する対策は近年ことごとく確立され,それがもとで失うことはほとんどなくなった.とくに人工換気法と経静脈栄養法の発達が成績の改善に大きく寄与した.その結果,過去20年間の成績は31例中29例(94%)生存と飛躍的改善した.一方,臍帯ヘルニアの予後を左右する因子がヘルニアの大きさや合併奇形などの児が持つ諸条件にあるために,最近20年間の成績でも64例中42例(66%)救命とそれ以前と比べ有意の改善を認めていない.腹壁破裂の治療法に関しては,一期的閉鎖法が第一選択され,腹腔内圧の過度の上昇からそれが困難な症例に限って人工布を用いた多段階手術が行われた.32例(71%)で一期的閉鎖が可能であり,残りの13例が多段階手術になった.そして人工布の縫縮は1から3回必要で,平均9.7日で解剖学的に閉鎖されている.一方,臍帯ヘルニアでは保存的療法に最大の信頼を置き,45例(53%)と最も多く利用した.この治療法の適応は非破裂性の臍帯ヘルニアの全てにあると思われる.ヘルニア嚢の最大経が7.0cm未満で手術療法が可能と判断された34例に一期的閉鎖を行った.一方,7.0cm以上でヘルニア門が極端にくびれた形状の17例に多段階手術を行った.初期治療からこれを行ったのが11例で他の6例は保存的療法で開始され,後に手術された.多段階手術法としては腹壁破裂,臍帯ヘルニアともSchuster法を専用した. 腹壁破裂と臍帯ヘルニアは臍の先天奇形という共通点から同時に論ぜられることが多いが,近年の新生児外科の充実に伴って両疾患には幾つかの異なった特徴があり,治療成績にも大きな隔たりが生じてきている.従ってここでは別個の疾患としてとらえ,自験例を明らかにしつつ私共の治療方針について報告する.

キーワード
腹壁破裂, 臍帯ヘルニア

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