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日外会誌. 98(11): 953-957, 1997


特集

逆流性食道炎・最近のトピックス

8.PPIかLaparoscopic surgeryか

東京慈恵会医科大学 外科

小林 伸朗 , 青木 照明 , 柏木 秀幸

I.内容要旨
逆流性食道炎の初期治療においてプロトンポンプ阻害薬はきわめて有効である.しかし,維持療法中における食道炎の再発率は高く,プロトンポンプ阻害薬の半量~常用量による維持治療を施行しても年間10~20%の内視鏡的再発,自覚症状の再発が認められる.したがって,プロトンポンプ阻害薬の半永続的投与を余儀なくされる症例も多い.これに対して,外科的治療は逆流性食道炎の主病態である食道胃接合部における防御機構の修復であり根治的治療である.これまでにNissen噴門形成術を代表とするさまざまなopen surgeryが施行されてきたが,90%前後の高い奏効率が長期的成績として報告されており,外科的治療成績は良好である.1991年以後,この分野においても腹腔鏡下手術が施行されるようになってきたが,そのほとんどはNissen噴門形成術である.初期手術成績は良好で,open surgeryとほぼ同等の奏効率である.平均手術時間は2時間30分,術後2日以内でほとんどの症例が退院し,一部の施設ではday surgeryとして行われている.また,社会生活への復帰はopen Surgeryよりもはやく,合併症の発生頻度も少ない.現在では,低侵襲性と美容上の観点からも,腹腔下噴門形成術は逆流性食道炎手術における基本術式となっている.また,長期的follow-upが必要と考えられる大多数の症例において,cost-effectivenessの面においても内科的治療より外科的治療が理にかなった治療手段であることが指摘されている.“PPIかLaparoscopic surgeryか”という命題に関する解答は明らかにLaparoscopic surgeryである.

キーワード
逆流性食道炎, 腹腔鏡下手術, Nissen 噴門形成術, プロトンポンプ阻害薬

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