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日外会誌. 98(11): 947-952, 1997


特集

逆流性食道炎・最近のトピックス

7.外科的治療の新しい展開-open surgery から laparoscopic surgeryまで-

慶應義塾大学 医学部外科

小澤 壯治 , 安藤 暢敏 , 北川 雄光 , 北島 政樹

I.内容要旨
逆流性食道炎は欧米においてgastroesophageal reflux disease(GERD)という疾患として扱われ,近年の腹腔鏡下手術も含めて外科的治療はそのほとんどが欧米で開発された.本項では各種手術法とその手術成績について自験例を含めて解説する.Nissen法は経腹的または経胸的に行われ,食道裂孔の縫縮に続いて遊離した胃底部を腹部食道へ全周性に巻き付ける(wrapする)方法で,腹部食道の確保と弁機能の付加により逆流防止を目的とする.全周性ではなく亜全周性(180~240°)の場合をToupet法と呼ぶ. Hill法は経腹的胃後方固定術であり,要点は食道裂孔を縫縮して食道胃接合部の小蛮側を大動脈前面の正中弓状靱帯に縫着固定する.Allison法は経胸的に横隔食道膜と壁側腹膜を食道近傍で切開し,その切離縁を横隔膜下へ縫着することで腹部食道を腹腔内へ還納して逆流防止をはかる.Belsey Mark IV法は経胸的前方胃底部雛壁形成術であり,胃の雛壁形成によるHis角の鋭角化,腹部食道の確保,食道裂孔の閉鎖を要点とする.主に短食道に対して行われるCollis-Belsey法やCollis-Nissen法は胃小弯側から腹部食道と同じ口径の管状胃管を作製して,食道胃接合部の位置を尾側に移動させるCollis胃形成術を行い,Belsey法またはNissen法を追加する.代表的な経腹的,経胸的手術の有効率は約90%であり,その中でもNissen法が多く行われている.また1990年代になり腹腔鏡下手術が導入されNissen法やToupet法が盛んに行われて経腹法と同等の治療成績を上げ,現在の第1選択術式となっている.今後は腹腔鏡下手術の長期成績が検証されるとともに,QOLや医療経済学的な観点からも逆流性食道炎の手術適応が拡大される可能性がある.

キーワード
Nissen 法, Hill 法, Allison 法, Belsey Mark Ⅳ 法, 腹腔鏡下手術


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