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日外会誌. 98(11): 942-946, 1997


特集

逆流性食道炎・最近のトピックス

6.内科的治療の新しい展開

獨協医科大学 第2内科

平石 秀幸 , 島田 忠人 , 寺野 彰

I.内容要旨
逆流性食道炎は,酸関連疾患として上部消化管の中でも,最も頻度の高いものの一つである.逆流性食道炎は,重症例においては,狭窄,出血,あるいはパレット食道の発生から発癌などの合併症を伴う.多くの食道炎は内科的治療の適応となり,これは生活指導を含む一般療法と薬物療法からなる.薬物療法は,制酸薬,粘膜保護薬,消化管運動機能改善薬,酸分泌抑制薬を含む.特に,酸分泌抑制治療が食道炎の治癒,症状の改善に有効である.びらん性食道炎(ロスアンゼルス分類でGrade B以上に相当)の治療に関するメタ解析では,治療12週以内の全般治癒率は,プロトンポンプ阻害薬(PPI)84%, H2受容体拮抗薬(H2-RA)52%,スクラルファート39%,運動機能改善薬38%,偽薬28%であり,PPIの治癒速度はH2-RAの約2倍と算出されており,PPIは特に優れた成績を示す.食度炎の治癒後,治療を中止すると,特にびらん性食道炎の再発率は年間80%前後と高率である.欧米の複数の成績から,1年後の再発率はPPIで23%, H2-RAで64%前後に抑制されると考えられる.本邦では,長期の酸分泌抑制がもたらす高ガストリン血症,カルチノイドの発生,発癌因子の生成などの危惧からPPIの使用期間制限が設定されており,原則として維持療法には使用できない.また,消化性潰瘍など胃・十二指腸疾患の治療に,Helicobacter pyloyiH. Pylori)の除菌が将来的に普及すると想定されるが,H. Pyloriの除菌により逆流性食道炎の頻度が増す可能性も指摘されている.維持療法へのPPIの適応,胃食道逆流症あるいは合併症の生活の質(quality of life)に対する影響および医療経済(cost-effectiveness)など複数の問題点を含め,本邦においても逆流性食道炎の治療戦略の再構築が望まれる.

キーワード
逆流性食道炎, 初期治療, 維持療法, プロトンポンプ阻害薬, H2受容体拮抗薬


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