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日外会誌. 98(11): 936-941, 1997


特集

逆流性食道炎・最近のトピックス

5.胃食道逆流と気道系疾患 気管支喘息を中心に

慶應義塾大学 医学部内科

金沢 実

I.内容要旨
胃食道逆流は喉頭炎,声帯結節などの耳鼻咽喉科疾患を引き起こし,咽喉頭異常感,嗄声などの原因となる.さらに喘息,嚥下性肺炎,慢性気管支炎などの下気道疾患を起こし,慢性咳嗽,喘鳴,喀血などの症状を発現させる.この中でも喘息における胃食道逆流の頻度は高く,逆流が喘息の誘因や増悪因子になっていると考えられるが,わが国においてその認識や対策は十分とは言えない.喘息の原因もしくは悪化機序として,少量胃酸の気管内への吸引と,下部食道に分布する迷走神経を介した反射性の気管支攣縮とが指摘されている.またテォフィリン投与は食道括約筋圧を低下させ,逆流を悪化させる可能性がある.診断は胸やけ,逆流などの病歴を聴取することである程度可能であり,確定診断には24時間食道内pHとピークフロー値もしくは咳轍の回数との関連をみることが必要である.治療としてはまず,就寝前3時間の飲食禁止と就寝中の上半身挙上などの胃食道逆流を防止する指導を行う.薬物療法としては,十分量のH2受容体拮抗薬によって治療を開始し,その後就寝前を中心とした維持療法を行う.プロトン・ポンプ・インヒビターの投与も有用と考えられる.手術適応は,喘息が胃食道逆流のため増悪している症例で,かつ内科療法の効果に限界があるか,長期間の内科療法が困難な症例と考えられる.近年普及してきた腹腔鏡的手術は患者への侵襲も少なく,わが国でも適応と効果の検討が望まれる.

キーワード
喘息, 胃食道逆流, 逆流性食道炎, H2受容体拮抗薬, プロトン・ポンプ・インヒビター

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