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日外会誌. 98(10): 884-888, 1997


特集

21世紀の医療問題

5.癌の告知とリビングウィル

福岡大学 脳神経外科

朝長 正道

I.内容要旨
癌告知,リビングウィル,インフォームドコンセントの現象的,技法的な面についてはすでに論じ尽くされているように思う.しかしこれらの行為が持つ意味については殆ど論議されていない.独断と偏見を交えつつ,以下のような組立で私の考えをまとめてみた.
1.癌という言葉の隠喩は生き続ける
2.死を忌避する意識はさらに高まる
3.癌の告知は増える
4.癌告知の意味は人間へのこだわりである
5.癌告知に絶対的,普遍的な規範はない
6.される者とする者
その溝を越せるのは医師の共感だけ
7.リビングウィル
人の死は常に尊厳である
8.患者の権利
権利は人格で裏打ちされるもの
9.医療は文化である
癌の告知,リビングウィル,尊厳死と安楽死,インフォームドコンセントの抱える問題は医療が文化であることを端的に表している.
医学や医療の進歩が人間に何をもたらし,これから何をもたらそうとしているのか.21世紀は,これまでの人間の所業が厳しく問い直される世紀となるだろう.
今,医師および医学界は,自らの職業への誇りと自信を失くしているように思う.
医師自身が医学や医療のあり方を問い直し,単なる技術者や研究者に堕せず,常に人間を見つめる医師を目指し,またその考えを積極的に社会へ語りかけるならば,21世紀は医師にとってやり甲斐のある時代となろう.そして癌の告知やインフォームドコンセント,医学・医療情報の公開は,社会に働きかけ,信頼を得るための最良かつ不可欠の手段である.

キーワード
癌告知, リビングウィル, インフォームドコンセント

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