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日外会誌. 98(10): 880-883, 1997


特集

21世紀の医療問題

4.「医療保障と医療保険」

日本大学 医学部医療管理学

大道 久

I.内容要旨
社会保障制度として医療を提供するには,税によって医療を提供する公費負担方式と,強制加入の社会保険によって運営される社会保険方式とがあるが,わが国では社会保険方式が取られ,世界に冠たる皆保険体制が確立している.
平成7年度の国民医療費は約27兆円で,国民所得の7%の割合を占める.国民医療費は毎年1兆円以上増加し,対前年比で5%前後の伸び率である.このうち老人医療費が約30%を占め,このままでは今後さらにその割合が増加することが予想されている.
皆保険体制で運用されている医療保険の主要な枠組は,勤労者等の被用者健康保険と自営業者等の国民健康保険に区分され,前者はさらに大企業を中心とした組合管掌健康保険と中小企業等のための政府管掌健康保険,及び共済組合等から成る.
医療費の4分の1は国庫により負担されており,国の予算で充当できる範囲内に医療費の規模が制約を受けている.現物給付の医療に対する支払は,全国一律の公定価格である診療報酬点数と薬価基準に基づき,出来高払い法式で支払われてきた.医療保険財政は逼迫しており,これまでにも薬価の切り下げや入院時の食費の患者負担等の対応が取られてきたが,政管健保等の大幅赤字が見込まれるに至って,本人一部負担の2割への引き上げや老人医療費の定額の見直し,薬剤種類に応じた患者負担の付加等の改正を行った.
今後も医療保険改革は推進されると見込まれており,定額支払方式の拡大,薬価基準制度の廃止,老人医療制度の導入,医療提供体制の効率化などの改革が実施される.わが国の医療保障は大きな転機に至っており,新たな枠組での医療保険体制が構築されることになるものと思われる.

キーワード
医療保障, 国民医療費, 医療制度改革, DRG/PPS


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