[書誌情報] [全文PDF] (1833KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 98(9): 786-788, 1997


その他

食道癌・胃癌に対する私の手術

富山医科薬科大学 外科学第2講座

藤巻 雅夫

I.内容要旨
食道癌手術の標準術式として,開腹術と頸部の切開術を同時に行い,最後に右開胸をして癌を切除する再建先行術式を採用してきた.この術式の利点は,腹部と頸部操作を同時に行うことで手術時間が短縮でき,患者と術者の負担が軽減されること,術中迅速を応用することにより,手術開始早期に頸部,腹部リンパ節転移や腹腔内遠隔転移の正確な把握が可能であることなどが挙げられる.また術前合併療法として,切除不能進行食道癌症例に対して放射線化学療法に温熱療法を併用し,約45%の症例で切除可能となった.microvascular surgeryの食道癌手術への応用として,頸部食道癌症例に遊離回盲部移植術を採用し,これまで5例に施行した.Bauhin弁に空気を送り震わせながら発声させ,さらにBauhin弁の逆流防止機構により,嚥下性肺炎の発生をみなかった.病院開院以来の食道癌切除症例は185例であり,直接死亡率は4.3%,5年生存率は20.4%であった.
胃癌の手術に対しては,胃全摘術の一部と噴門側切除の症例に対し,逆流性食道炎を防止するために回盲部上行結腸間置術を採用し,これまで55例に施行した.この術式では逆流性食道炎の発生はなく,胃内容排出試験の結果でもコントロール群と類似して非常に具合がよく,体重変化でも大きな減少がなかった.
私は新潟大学第一外科時代,それから富山へ参りまして私なりに考えたいろいろな手術法がありますのでそれについてお話ししたいと思います.

キーワード
再建先行術式, 術前合併療法, 遊離回盲部移植術, 回盲部上行結腸間置術


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。