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日外会誌. 98(9): 761-766, 1997


特集

進行度を配慮した食道癌外科治療

Ⅳ.T4(A3)症例における外科治療と補助療法
1.食道癌T4(A3)症例におけるNeoadjuvant療法の適応と手術治療

神奈川県立がんセンター 外科第1科

青山 法夫 , 小泉 博義

I.内容要旨
食道癌他臓器浸潤(T4)症例は,浸潤臓器を合併切除できない場合が多く,そうした場合には癌遺残となり絶対非治癒切除(CO)に終わってしまい予後不良である.有効なneoadjuvant療法によりdownstagingが得られることが期待される.現在における食道癌の標準的化学療法であるCDDP/5FU併用療法(FP)は,T4食道癌には奏効率が低く効果が期待できない. FPにAdriamycin(ADM)をレジメンに加えたFAPは,甲らによってT4食道癌12例に対し75%の奏功率が得られたと報告された化療で,自験例5例のT4食道癌に対しての奏功率は80%(CR 20%)で,術前FP施行T4食道癌9例(奏功率0%)に比べ,有意に(p< 0.01)効果良好であった.術前FAP施行例は食道と他臓器の間が瘢痕化し,全例合併切除をせずに主病巣の治癒切除が可能で,組織学的効果もGrade 3が20%, Grade 2が60%,Grade 1aが20%で良好であった.リンパ節に対しても40%にGrade 3の効果が得られ,n(一)となった.副作用では,FPではみられなかった骨髄抑制によるGrade 3以上の白血球減少症が60%に認めた.
一方,T4症例に対する同時併用化学放射線療法では,high dose(50Gy以上)の照射を行うことが多く,その場合の奏効率は72~80%(CR 8~30%)で,照射単独より高い局所コントロールが期待できる.奏功例の中で治癒切除可能であれば,salvage operationが考慮される.実際には37~48%に切除術が行われているが,特に合併症が増えることはなく,非切除例に比べ予後が良いとの報告が多い.
3クール化療後に更に同時併用化学放射線療法行う治療も試みられているが,治療関連死(TRD)が11%に認められ,phase IIで中止になっている.やはり,同時併用化学放射線療法までが安全性の面で限界と考えられる.

キーワード
neoadjuvant 療法, T4食道癌, 同時併用化学放射線療法, FP療法, FAP療法

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