[書誌情報] [全文PDF] (2144KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 98(9): 727-732, 1997


特集

進行度を配慮した食道癌外科治療

Ⅱ.T1(SM癌)症例の手術
1.T1症例のリンパ節郭清(一般的概論)

東海大学 医学部外科

三富 利夫 , 幕内 博康

I.内容要旨
食道癌では粘膜固有層までのものにはリンパ節転移はまずなく,粘膜筋板から粘膜下層に浸潤すると出現をみる.粘膜下層癌90例中40例(44.4%)にリンパ節転移を認め深達度が深くなるに従い,転移率,転移個数共に増加をみた.転移率はsm1 33.3%, sm2 44.0%,sm3 50.0%で,平均転移個数はそれぞれ1.7個,2.6個,3.2個であった.
食道癌のリンパ節転移は頸部・胸部・腹部へ広く存在するが,表在癌といえども同様で,また初発リンパ節転移も同様であった.転移率の高いリンパ節は,101L,105,106rR,106rL,108,110, 1, 2, 3, 7番であり,癌腫の占居部位がIuでは頸部上縦隔へ,Ei・Eaでは下縦隔,腹部への転移が高率であった.
最も頻度の高いIm食道癌では,101,102m,104,105,106r,106t,107,108,110,1,2,3,7を主とする3領域リンパ節郭清が必要であり,Ei・Ea食道癌,とくに下方へ限局しているものでは頸部・上縦隔リンパ節の郭清を省略することも可能と思われた.
T1食道癌のうち粘膜固有層癌は原則的に内視鏡的粘膜切除術(EMR)を,粘膜筋板から粘膜下層表層(sm1)のものも可及的にEMRを施行したい.
食道表在癌の5年生存率は85.6%でありm1~sm1では100%,sm2 73.5%, sm3 71.6%であった.

キーワード
T1食道癌, 食道表在癌, リンパ節転移, リンパ節郭清, 食道癌根治術

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。