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日外会誌. 98(8): 685-690, 1997


特集

慢性肝炎・肝硬変合併疾患の外科

Ⅲ.各論的事項(慢性肝炎)
5.肝硬変合併胆石症と外科

東北大学 医学部第1外科

鈴木 正徳 , 伊勢 秀雄 , 内藤 剛 , 松野 正紀

I.内容要旨
肝硬変患者の胆石保有率は29~54%で非肝硬変症例の10倍の発生頻度である.胆石の種類としては黒色石が50~85%を占める.この原因として肝硬変症例では胆嚢胆汁中のイオン化カルシウム濃度が有意に高く,ビリルビンと結合してビリルビンカルシウムを形成し,様々の過程を経て黒色石に変化する経路が想定される.
肝硬変に合併した胆石症は78%が発見時に無症状であり,その後の自然経過でも約80%の症例が無症状で経過する.これは結石自体が径の小さな色素石が多いことと関連している.無症状胆石に対する治療方針は画一的なものはなく,症例に応じて決定すべきである.
一方,肝硬変合併胆嚢結石症の手術死亡は10.2~33.9%であり,通常の胆石症の手術死亡の0.4%に比較してきわめて高い.そのため術前の肝予備能の評価を十分におこない,合併症の発生を如何に抑えるかが重要となる.とくにChild C群では手術を避けるべきであるが,緊急手術を避けえない場合には不良な転機について銘記すべきである.
肝硬変合併総胆管結石症に対する内視鏡的乳頭切開術を用いた採石術や肝硬変合併胆嚢結石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術は低侵襲的な治療手段として注目されているが,症例に応じた治療法の選択が重要である.

キーワード
Liver cirrhosis, Cholelithiasis, Surgery, Child's classification, Postoperative complications


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