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日外会誌. 98(8): 667-670, 1997


特集

慢性肝炎・肝硬変合併疾患の外科

Ⅲ.各論的事項(慢性肝炎)
1.肝硬変合併呼吸器疾患の外科

東北大学加齢医学研究所 呼吸器再建研究分野

小野 貞文 , 谷田 達男 , 鈴木 聡 , 藤村 重文

I.内容要旨
呼吸器外科領域の手術は,術後肝機能に影響する循環系の変化や,肺の酸素化能の低下,あるいは大量出血をもたらしえる手術であり,適応の決定や術後肝不全の予防に厳重な注意が必要である.肺葉切除や肺別除術は,肺血管床減少による右心後方負荷の増大とそれに基く心拍出量低下,右房圧上昇や低酸素血症をもたらす可能性がある.これらの変化は肝細胞の壊死や肝類洞拡張をもたらす危険因子であり,実際,術前肝障害のない症例でも肺葉切除後には肝機能異常が約2週間持続する.したがって,特に術前肝機能低下のある症例では,肺切除の適応決定に際し,心拍出量低下防止,組織への酸素供給維持の観点からの適応決定の努力が必要であり,一側肺動脈閉塞試験が有用である.本検査にて動脈血酸素分圧低下や心拍出量低下を認めた症例では,術後肝機能悪化がみられる例があり,かかる症例に対しては,術中術後の厳重な循環動態の監視,積極的な昇圧剤などの投与,充分な酸素投与が必要である.肝硬変などによる低アルブミン血症は,気管支断端痩発生のハイリスクであることから,断端被覆や充分な蛋白製剤の投与が望まれる.術中大量出血が予想される膿胸の手術や喀血に対する緊急手術時には,術前に血管造影検査を施行し,異常流入血管や気管支動脈に対し塞栓術を積極的に施行し,術中出血量を最小限に抑える努力をすることが術後の肝機能保護のために重要である.

キーワード
術後肝機能障害, 一側肺動脈閉塞試験, 気管支動脈塞栓術, 肝肺症候群


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