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日外会誌. 98(7): 633-638, 1997


特集

膵癌治療の変遷

10.膵癌に対する化学療法の評価

1) 大阪府立成人病センター 外科
2) 大阪府立成人病センター 内科

石川 治1) , 大東 弘明1) , 佐々木 洋1) , 亀山 雅男1) , 甲 利幸1) , 中森 正二1) , 古河 洋1) , 今岡 真義1) , 中泉 明彦2) , 上原 宏之2)

I.内容要旨
膵癌の化学療法を評価する際,腫瘍径の計測は容易でなく,全身状態や生存期間が癌以外の要因(黄疸.消化管狭窄・疼痛など)によって修飾されることがあるため,治療効果の判定は屢々困難である.本稿ではこれまで報告されてきた膵癌の全身,局所化学療法の成績を紹介し,今後の動向をさぐってみた.その結果,非切除例に対する単剤全身投与の奏効率は一般に20%前後, 50%生存期間は6カ月前後であった.多剤併用療法の奏効率はこれよりも高かったが,その延命効果は単剤投与の場合と較べても明かではなかった.切除の有無に拘わらず,放射線治療+化学療法は,放射線或いは化学療法単独治療に較べて生存期間を若干延長している.一方,局所化学療法には,最近優れた成績が報告がされている.すなわち,切除不能膵癌に対するAngiotensin-II併用動注療法は高いQOLを保ちつつ50%生存期間14カ月を得ている.また,切除後経肝動脈+門脈的抗癌剤投与法は肝転移予防に有効であるなどである.したがって,乏血性の腫瘍である膵癌の化学療法では,抗癌剤の癌部への到達性をさらに高めることが先決課題であり,その後に高感受性薬剤の選択や新規薬剤の応用といった工夫がさらなる成績向上につながるのではないかと考えられる.

キーワード
膵癌, 化学療法, 全身化学療法, 局所化学療法

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