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日外会誌. 98(7): 628-632, 1997


特集

膵癌治療の変遷

9.膵癌切除例に対する術中放射線療法の評価

熊本大学 医学部第1外科

平岡 武久 , 金光 敬一郎 , 辻 龍也

I.内容要旨
膵癌の治療成績はいまだ悪く,そこで,1984年以来,われわれは局所再発防止対策として拡大郭清手術に広範囲術中照射を併用してきた.拡大郭清手術は,大動脈周囲の両側を神経叢とともに郭清するもので大動脈裂孔部から下腸間膜動脈分岐部より尾側後2cmまでの間を,また左右は左右尿管の間の郭清を行うもので,その後,郭清した同じ範囲に電子線を9~12MeVのエネルギーで,30Gyを照射した.現在までに35例に行い, これらの治療成績を併用療法導入以前の拡大郭清手術単独11例の治療成績と比較検討した.
拡大郭清手術単独例の生存成績は,最長生存3年2カ月を得たにすぎず,広範囲術中照射併用例では, 4例の5年生存例を得, 5年生存率16.8%で,肉眼的治療切除例で22.3%,リンパ節転移程度n1例で26.3%,stage IVa例で18.9%であった.術中照射併用例の転帰は, 8例が現在生存中で,27例が死亡し癌死例は22例であった.再発部位は肝が13例,肺・胸膜3例,腹膜3例,回腸1例,残存膵2例であった.剖検を10例に行い, 4例に局所再発を認めた.所見は大動脈周囲で厚い結合識に囲まれて散発性に認められ,手術単独例の所見と異にしており, 1例は5年以上生存した.6例には局所再発を認めず,そのうちの2例は非治癒切除例であり, また局所再発のない例で2例に肝転移を認めた.局所再発制御に改善を認めたが,肝転移をはじめとする血行性転移によって, その生存成績は飛躍的には向上しなかった. それ故,拡大郭清手術と広範囲術中照射併用療法は,肝転移対策がない現状では,症例を選択して適応すべきと思われる. そして,膵癌治療成績の飛躍的向上のためには,肝転移対策の確立が急務である.

キーワード
膵癌, 拡大郭清手術, 術中照射療法, 肝転移, 局所再発


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