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日外会誌. 98(7): 622-627, 1997


特集

膵癌治療の変遷

8.膵・膵管と消化管吻合

帝京大学 医学部第1外科

天野 穂高 , 高田 忠敬 , 安田 秀喜 , 吉田 雅博 , 牛谷 宏子 , 内田 豊彦

I.内容要旨
膵頭十二指腸切除術後の再建で最も重要なのは膵消化管吻合である.創世期には,膵断端は縫合閉鎖されていたが,膵消化管吻合を行わなかった場合の術後合併症の発生が膵痩であること,ならびに脂肪肝の危険性から膵消化管吻合がなされるようになった.代表的な吻合法としては,膵空腸吻合と膵胃吻合に分かれ,膵空腸吻合もさらに膵管空腸粘膜縫合と完全膵管ドレナージによる膵空腸吻合(膵管挿入法)に分かれる.1981年8月から1996年12月までに帝京大学第一外科で経験した膵頭十二指腸切除術は,183例であった.膵管挿入法が104例,膵管空腸粘膜縫合が58例,膵嵌入法2例,膵胃吻合が19例であった.膵消化管縫合不全は,膵管挿入法による膵空腸吻合に5例,4.8%,嵌入法による膵胃吻合に1例, 5.6%であったが,膵管空腸粘膜縫合による膵空腸吻合では現在のところ縫合不全はない.年代別に膵消化管縫合の変遷をみると, 1981年に帝京大学に赴任した当初は,完全膵管ドレナージによる膵空腸吻合(膵管挿入法)が主で,膵管が拡張している症例には膵管空腸粘膜縫合を行っていた.1985年から膵胃吻合を取り入れたが,術直後の胃液欝滞が著明なこと,膵腸吻合との間に縫合不全発生率に差がないこと, さらに,長期経過で胃粘膜により膵断端が閉鎖され膵管狭窄が起った症例を経験したことから1991年以降, この術式を放棄した.1991年以降は,膵管拡張が軽度の症例にも膵管空腸粘膜縫合を取入れ, これまでの58例では縫合不全をみていない.最近では,膵管拡張の有無,膵の硬度に関係なく膵管空腸粘膜縫合を基本とし,膵管拡張がないものにはセクレチン静注後,膵管とともに膵実質をも刺通させることにより縫合を堅固なものとしている.なお,膵管チューブはステントとして用いている. ここでは,代表的な膵.膵管消化管吻合を紹介するとともに我々の経験例での成績を述べた.

キーワード
膵頭十二指腸切除術, 膵管空腸吻合術, 膵胃吻合術, 粘膜縫合, 膵腸吻合縫合不全

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