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日外会誌. 98(7): 615-621, 1997


特集

膵癌治療の変遷

7.膵癌の治療-血行再建

1) 栃木県立がんセンター 外科
2) 慶応義塾大学 医学部外科

尾形 佳郎1) , 菱沼 正一1) , 高橋 伸2) , 松井 淳一1) , 尾澤 巌1)

I.内容要旨
1974年7月から1997年3月までに経験した膵癌切除192例のうち107例,55.7%は膵切除の際に血管合併切除を必要とした.内訳は門脈合併切除103例(うち15例は同時に動脈切除施行),肝動脈切除14例(うち10例は同時に門脈切除施行),上腸間膜動脈切除2例(2例とも門脈切除施行),腹腔動脈切除5例(うち3例は同時に門脈切除施行)である.血管合併切除施行の有無で合併症発生率,在院死亡率,手術死亡率を比較すると,施行例では23.1%,13.0%,5.6%であるのに対し非施行例では20.2%,5.9%,1.2%といずれも施行例に多い傾向を示したが,統計上の有意差はなかった.
膵頭部癌切除例の根治度A・B症例を対象に血管合併切除の有無で予後を見ると,血管合併切除非施行例群の生存率が良い傾向にあったが,両群間に有意差はみられなかった(P=0.09).血管合併切除を伴う根治度A・B群は血管合併切除を伴わない根治度C群に比較し有意に予後がよかった.膵癌に対する門脈合併切除例で5年以上の生存は6例,うち2例は10年以上生存中であり,最長生存は13年6カ月生存中である.
動脈切除例の予後は悪かった.術後生存期間は肝動脈切除例では2~22カ月(1例22カ月生存中),上腸間膜動脈切除例では6.5~8カ月,腹腔動脈切除例では3~41カ月(1例9カ月生存中)である. 22カ月以上生存の2例はいずれも全胃温存例で良好なQOLが維持できた症例である.動脈切除の適応は厳格にすべきであり,膵全摘,胃全摘となる症例は手術適応としない方がよい.

キーワード
膵癌, 門脈合併切除, 肝動脈合併切除, 上腸間膜動脈合併切除, 腹腔動脈合併切除

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