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日外会誌. 98(6): 549-554, 1997
特集
胃切除後再建術-特にpouch形成の意義-
5.胃全摘後回結腸間置による再建術
I.内容要旨胃全摘後の再建法の問題点は,逆流性食道炎,ダンピング症候群や下痢等の愁訴の軽減にある.このため,Bauhin弁による逆流の防止と結腸のreservoir機能に期待して回結腸間置術を行っている.対象は壮年層で治療切除で,胃上部早期癌に対しては幽門輪を1.5cm温存し回結腸を間置している.膀下5cmに至る上腹部正中切開で開腹し,胃全摘を行う.幽門輪温存の場合は幽門輪より3cmのところで仮切離し,吻合時に再切離する.移植腸管は,回結腸動脈を栄養血管とした回腸7cm,結腸13cmで,これを反時計方向に回転し,食道十二指腸(幽門)間に挙上する.食道回腸吻合,結腸十二指腸(幽門)吻合を行い再建が終了する.術後愁訴を1年以上経過した時点でRoux-Y法と比較すると,逆流性食道炎は0%と19%でBauhin弁により完全に防止された.ダンピングは21.7%と23.8%と同程度であったが重症例はなく,幽門輪温存例では10%に減少した.回結腸の代用胃としての機能を調べるため,バリウムによる造影,経口糖負荷試験(O-GTT)とTcによる代用胃よりの排出試験を行った.透視では代用胃用に一時溜まり,十二指腸に排出されるが,幽門輪温存ではリズミカルに幽門輪から排出され,頭を下げても食道への逆流はなかった.O-GTTではRoux-Y法でみられたOxyhyperglycemiaはみられず,血糖値の上昇もなだらかで極端な低血糖を示さず,比較的安定していた.代用胃排出試験では,15分で半分は停滞し,45分で大部分排出されたが,幽門輪温存例では長い時間胃内に停滞が認められた.
本術式の特徴は,①小さな短い腸管で逆流が防止される.②血管系が太くてしっかりしている.③腸管の屈曲や捻転が少ない.④結腸による貯留能にも期待でき,症例を選び幽門輪を温存することによりさらに貯留能を増すことができる.手術手技は極めて単純で術後愁訴を少なくするには優れた術式であると考える.
キーワード
胃全摘術, 幽門輪温存胃切除術, 回結腸間置術, 逆流性食道炎, QOL
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