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日外会誌. 98(6): 542-548, 1997


特集

胃切除後再建術-特にpouch形成の意義-

4.胃全摘後-横行結腸間置

群馬大学 医学部第1外科

長町 幸雄

I.内容要旨
胃全摘後の代用胃には,1回に十分量の食事摂取ができる貯留能が要求され,消化・吸収および排出などの胃機能の代償ができること,さらに逆流性食道炎やダンピング症候群などの術後合併症を起こさぬ安全で容易な再建法と再建に用いる材料の選択(空腸か結腸か)が必要不可欠な条件である.目的は術後のQ.O.L.を最良に保つことである.
本稿では,胃全摘後の再建に横行結腸を用い,順蠕動性に食道と十二指腸問に有茎移植を行っている術式を紹介し,工夫・改良を重ねた歴史的経緯と臨床成績などを手技の実際とともに記述した.
横行結腸を代用胃として最初に用いたのは1951年,Stateらであるが,筆者らの間置法は順蠕動性に間置している点で異なる.教室では1965年から1970年までに52例の横行結腸間置を行ってきたが,食道一間置横行結腸吻合はend-to-endに行っており, Stateらの術式と混同しないために長町のType-I法と呼んでいる.
1986年から現在までは食道-間置結腸吻合をend-to-sideに変更して1996年までに133例に施行している.1986年から1990年までは手縫い法で行い,60例全例に間置結腸の結腸ヒモと食道断端との吻合を行って逆流防止弁作用を期待し,逆流性食道炎発症を術後2年目までに0%とすることができた.1991年からは自動縫合器を食道と問置横行結腸間の吻合に用い,1996年までに72例に達している.手縫いの場合に逆流防止作用で役立ったような結腸ヒモを用いた食道との吻合は不可能であるが,十分に逆流防止が可能であり,逆流性食道炎の発生も5%以下である.オート スーチャーを用いたType-II法は術式も容易であり,馴れれば安全に誰にでもできる有用な再建術式であることを推奨した.また術後の代用胃機能検査法の実際を提示し,Type-II法が貯留能,排出能,消化吸収面で優れていることを強調した.

キーワード
順蠕動性横行結腸間置法, 逆流性食道炎防止弁, 代用胃の貯留能, 胃全摘後の消化と吸収, 機能的な代用胃と評価法


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