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日外会誌. 98(5): 505-510, 1997


特集

胆管癌の治療における最近の治療法とその成績

8.乳頭部癌

久留米大学 医学部第2外科

木下 壽文 , 中山 和道 , 福田 秀一 , 今山 裕康

I.内容要旨
乳頭部癌は膵頭部領域癌のなかでは比較的予後良好な疾患であるが進行度により予後は大きく異なることから1965年1月~1996年6月までの乳頭部癌切除症例105例を対象にその治療成績から治療方針を検討した.術式別では膵頭十二指腸切除術における5年生存率は56.6%と比較的良好であったが乳頭部切除術では2年生存例は得られなかった.5年生存率はstage I 93.3%, stage II 70.2%, stage III 7.3%, stage IVでは2年生存は得られずstage III,IVにおいては極めて予後不良である.組織学的進展因子のなかで予後にもっとも影響を与える因子は膵浸潤(panc)であり,膵浸潤の進展度に相関してリンパ節転移率,脈管侵襲率が高率であった.またpanc1を膵実質浸潤の有無でpanc1aと1bに細分した累積生存率では各3年生存率は75.0%,29.8%とpanc1aがpanc1bと比較して有意に良好であった.リンパ節転移は94.5%までが2群リンパ節までの転移であり,腸問膜リンパ節⑭転移率は2群リンパ節陽性例中73.3%と極めて高率であった.⑥転移例を1例(1.0%)に認めたが十二指腸第1部,胃幽門部への浸潤を認めた例はなく幽門輪温存膵頭十二指腸切除術は乳頭部癌に適応できると考えられた.以上より系統的⑭郭清を伴う2群郭清膵頭十二指腸切除術を乳頭部癌の標準的術式として施行し,膵実質浸潤が疑われる症例に対して⑯郭清を付加してきた.結果は6例の⑭転移陽性長期生存例が得られpanc1aによるstage IIおよびn因子がstage決定因子となったstage IIIにおいては予後の改善がみられたが,panc1b,2,3では予後の改善につながらず,とくにpanc2,3では2年生存例が得られなかった.膵実質浸潤例に対しては膵癌に準じた拡大郭清,集学的治療が必要と考えられた.

キーワード
乳頭部癌, 外科治療

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