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日外会誌. 98(5): 501-504, 1997


特集

胆管癌の治療における最近の治療法とその成績

7.下部胆管癌

1) 東京女子医科大学 消化器外科
2) 浩生会スズキ病院 外科

吉川 達也1) , 平野 宏2) , 新井田 達雄1) , 吾妻 司1) , 太田 岳洋1) , 高崎 健1)

I.内容要旨
予後不良な胆管癌のなかにあって,下部胆管癌は最も切除率,治癒切除率も高く,比較的予後良好な癌である.しかしながら,切除例の累積5年生存率は13~52.6%と報告されており,決して満足できる成績とはいえない.今回,教室で施行してきた外科治療及びその治療成績について述べ,下部胆管癌に対する外科治療上の問題点を考察した.
過去28年間に教室で経験した下部胆管癌切除例は79例であった.膵頭部癌や胆嚢癌との重複癌症例3例を除く,臨床病理学的検討可能な74例を対象に検討した.切除術式はPD 58例, PpPD 16例であった.治癒度をみると,治癒切除38例,治癒切除率51.3%であった.手術成績をみると,直死他病死例を含めた累積5年生存率は35.8%であった.治癒切除群の累積5年生存率は56.6%であり,治療成績向上のためには少なくとも治癒切除を得ることが必須であるといえる.下部胆管癌における非治癒切除因子をみると,hw, ew因子があげられる.hwに関しては周囲結合織を含めた肝側胆管断端の術中迅速病理組織診が不可欠である.またewに関しては解剖学的に膵内胆管背側の膵臓は薄いこと,さらに下部胆管癌において癌が十二指腸と膵臓との結合部を経て後腹膜へ浸潤する経路が存在し,膵臓浸潤陽性でなくともew陽性となる症例が少なからず存在することを考えると,膵頭部背側組織の十分な郭清が必要である.またリンパ節郭清に関しては,諸家の報告とあわせ検討し,R2+No.14郭清を行うべきと考えている.なお,No.16郭清については今後の検討課題である.また最近では術後のQOLを考慮し,ほぼ全例にPpPDを適応している.上腸間膜動脈周囲神経叢の郭清に関しては切除例に同部神経叢浸潤例を認めなかったことより,No.14領域の全周,全域の郭清を確実に行う目的で表層の神経叢は切除するものの,深層の神経叢は温存することを試みている.

キーワード
下部胆管癌, 進展様式, ew, hw, 外科治療

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