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日外会誌. 98(4): 443-448, 1997


特集

炎症性腸疾患の治療における最近の進歩

8.J型回腸嚢肛門吻合術の生い立ち

兵庫医科大学 第2外科

宇都宮 譲二

I.内容要旨
回腸肛門吻合術(IAA)の実用化の歴史には二つの考え方の流れがある.Sphincteric Continentの温存の立場に立つRectal Mucosal Replacement(Peck)とReservoir Continentの再生を目指すIntestinal Pouchの方針である.筆者は前者の考え方に従って長い直腸筋筒を温存しこの中に回腸を挿入して一体化せしめ嚢を肛門活約機構と直接に結合する事を目的としJ型とした.一方後者はValiente-BaconのS型回腸嚢の実験的研究(1956)に始まりKochの排便調節イレオストミイに用いられた腹腔内回腸嚢がParksにより骨盤内回腸嚢へと応用されS型回腸嚢肛門吻合へと発達した.しかしS嚢は約半数で排出困難が発生した.これは導管が狭窄の原因となるためである.IAAは急速に各国において普及し各種回腸嚢型が開発されたが今日のほとんどJ嚢法が用いられている.その理由は,まず手技が比較的比較的簡単であること,複雑な嚢と比較しても機能的に大差がないこともあるが何よりも常に自然排便が可能であるからである.筆者は1978年東京医科歯科大学第二外科において研究を開始して以来17年,兵庫医大第二外科において13年の間この基本的考え方によってIAAを施行または指導し来たが現在症例数はUC例約150例FAP例約120例に達し両者の機能に大差はなく症例すうは更に漸増しつつあることは本法がUC患者に対して着実に恩恵を与えている事を物語っている.手術手技の進歩には科学的記述では表現し切れない部分が在る.本校では主に記憶に在る体験談を記述してそれを補うことにした.

キーワード
回腸肛門吻合術, 機能温存大腸摘除術, 潰瘍性大腸炎, J型回腸嚢, 直腸粘膜置換術

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