[書誌情報] [全文PDF] (3586KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 98(4): 418-423, 1997


特集

炎症性腸疾患の治療における最近の進歩

4.クローン病に対する腹腔鏡下手術

1) 慶應義塾大学 医学部外科
2) 慶應義塾大学 内科

渡邊 昌彦1) , 大上 正裕1) , 寺本 龍生1) , 日比 紀文2) , 北島 政樹1)

I.内容要旨
近年,腹腔鏡下手術は各種の消化器疾患に応用されるようになった.なかでも腸疾患は腸管の解剖学的特性から,腹腔鏡下手術に適していると考えられている.しかし,大腸癌に関しては本法が郭清度や予後の低下をきたす可能性があるといった議論もあり,一定の見解は未だ得られてはいない.一方,良性の腸疾患は何よりも低侵襲性が重視されることから,本法の良い適応であろう.われわれは18例のクローン病に対して,本法を導入し良好な成績を得た.
方法は腹腔鏡下に大腸や癒着を剥離,授動し,瘻孔は自動縫合器で切離を行った後に小切開創から腹腔外に露出し,直視下に切除・吻合を行う腹腔鏡併用(補助下)手術である.十分な保存的治療によって寛解導入された症例は,癒着も腹腔鏡下に剥離可能であり,4例の内瘻も切離可能であった.術後経過は良好であり第1病日から経口摂取,第7病日には退院可能であった.また,開腹術に比し創痛も軽微で運動制限も軽減された.
以上より,若年者に多いクロ一ン病には,美容上優れており低侵襲性で,さらに再手術も同じ創で行える腹腔鏡下手術は適していると考えられた.今後,腹腔鏡下手術はクローン病の外科的治療の選択肢となるであろう.

キーワード
腹腔鏡下手術, クローン病, 炎症性腸疾患, 腹腔鏡併用腸切除, 狭窄形成術

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。