[書誌情報] [全文PDF] (2896KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 98(4): 406-411, 1997


特集

炎症性腸疾患の治療における最近の進歩

2.クローン病に対する内科的治療

1) 弘前大学 医学部第1内科
2) 国立弘前病院 消化器科

棟方 昭博1) , 芳賀 陽一2)

I.内容要旨
クローン病の治療は内科的療法が主体で,内科的治療は栄養療法(成分栄養および完全中心静脈栄養),薬物療法に大別される.栄養療法は内科治療のfirst choiceで,単独で80~90%の緩解導入が可能である.成分栄養の栄養剤はelemental diet,消化態栄養,半消化態栄養に分類されるが,治療効果については同等との報告が多い.成分栄養は緩解維持療法としても有用で,在宅栄養療法(home hyperalimentation)が行われる.完全中心静脈栄養の適応は腸管通過障害,高度の短腸症候群,成分栄養不耐・無効例であり,適応は限定されつつある.栄養療法は緩解状態になっても経口摂取の再開で1年以内に約半数が再発することが問題点である.
薬物療法のfirst choiceとして従来はステロイドとsalazosulfapyridine(SASP)が用いられてきたが,近年5-aminosalicylic acid(5-ASA)が開発された.ステロイドは単独での緩解導入効果が認められているが,緩解維持効果については否定的な報告が多い.SASPも緩解導入効果はあるが,緩解維持効果は認められない.5-ASAは小腸病変にも有効であり,SASPと同等の薬効があり副作用が少なく,SASP不耐症にも使用可能である.緩解導入療法,維持療法さらには腸管切除後の再発防止にも有効である.免疫抑制剤の6-mercaptopurine,アザチオプリンおよびメソトレキサート,抗生剤のmetronidazoleはsecond Iineの治療として,難治例,ステロイド離脱困難例,頻回再燃例,難治性の痩孔に用いられる.新しい治療法としてはbudesonide,4-aminosalicylic acid(4-ASA),anti-tumor necrosis factor antibodyなどが検討されている.
治療の実際は急性活動期には入院の上栄養療法を行い,栄養療法単独で緩解導入が困難な例には薬物療法を併用する.維持療法は在宅栄養療法と,必要に応じて5-ASAなどの薬物療法を併用していく.QOLをできるだけ低下させずに個々の症例の背景,希望を考慮しながら,種々の治療法から最適な治療法を選択・組み合わせていくことが大切である.

キーワード
クローン病, 栄養療法, 5-ASA, 免疫抑制剤, metronidazole


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。