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日外会誌. 98(3): 385-390, 1997


特集

大腸癌-診断と治療の進歩

7.低位直腸癌における自律神経温存術

都立駒込病院 外科

森 武生 , 高橋 慶一 , 安野 正道

I.内容要旨
低位進行直腸癌に対する自律神経温存術は側方郭清と神経温存の両立が可能かという点と,神経周囲浸潤による癌の遺残の可能性について,未だに多くの問題点がある.郭清と温存の両立については骨盤内,特に低位骨盤側方と,内腸骨動脈末梢部についての的確な知識があれば鋭的な郭清により可能であると考える.この点について解剖と術式の詳細を記した.また神経周囲浸潤に関しても鋭的な郭清により可及的に神経叢を薄く剥離することにより(0.2mm程度),癌遺残の危険性は大幅に低下するものと考えられる.当科では初期には片側温存を進行癌の90%に行い,温存側に対して50Gyの術後照射を行ったが, randomized trialによる無処置群との間に局所再発率に全く差を認めなかった.現在両側温存術を進行癌に対し,術中に神経系への直接浸潤を認めず,高度の側方転移のない症例(全体の85%)に対し行い腫瘍に近い側への術後照射によるtrialを進行中である.片側または両側温存による術後の排尿機能に関しては,社会復帰の障害となるような尿失禁などは,片側温存でもきわめて稀であり,両側温存では十分に満足できる結果であった.しかし性機能に関しては片側温存では勃起可能は全体の60%であり,内50%が射精可能であるにすぎなかった.両側温存では各々90%と60%に改善した.しかし本来もっと重篤な障害を生じる非温存手術の適応であった進行癌症例に対し温存を行う際には,ある程度の障害発生はやむを得ないと思われるが,側方郭清の適応の厳密化や術式の改良などの点につきさらに検討を要する.

キーワード
自律神経温存術, 側方郭清, 術後排尿性機能, 低位進行直腸癌

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