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日外会誌. 98(3): 373-379, 1997


特集

大腸癌-診断と治療の進歩

5.術前画像診断(再発に対する診断)

名古屋大学 医学部第2外科

伊藤 勝基 , 仲田 和彦 , 渡辺 正 , 日比 健二 , 笠井 保志 , 秋山 清次 , 高木 弘

I.内容要旨
大腸癌の局所再発は早期に的確な診断をつけ,骨盤内臓全摘術,その他の拡大手術を含めた外科的処置あるいはこれに化学療法,放射線療法を併用する集学的治療をおこなうことにより,治癒,延命効果を含む,比較的良好な予後が期待されるようになってきた.局所再発の診断には自覚症状の出現,腫瘍マーカー値の変動に加え画像診断が重要な位置を占めているが,画像診断に於いてはとくに術後の瘢痕組織と再発腫瘍巣との鑑別に苦慮することが多い.我々は従来の1年毎のCT撮影, MRI撮影に加え,必要に応じてfluorine-18 2-fluoro-2-deoxy-D-glucose(FDG)を用いたpositron emission tomography(以下PET)の撮影,131Iまたは111lnにて標識した抗CEAモノクロナール抗体CEA102投与によるimmunoscintigraphyを用いて,質的診断の向上に努めている.PETのCT画像の質はX線CT, MRIに比して劣るものの,腫瘍の存在診断,瘢痕組織との鑑別に優れ,CTやMRI以上に助けとなる症例も多い.特にPETにおけるDAR(Differential Absorption Ratio)は腫瘍組織とそうでない組織の鑑別に有用であった.他方131Iまたは111lnにて標識した抗CEAモノクロナール抗体CEA102投与によるimmunoscintigraphyを用いての腫瘤の質的診断はPETの画像には劣り,改善の必要性が充分に存在するが,ある一定以上の大きさが有れば画像として描出する事が出来,腫瘍組織を撮像するいわゆるRadio Immuno Detection(RAID)陽性は10症例中7例であった.同じモノクローナル抗体を使った治療法Radio Immuno Therapy(RAIT)の開発と共に今後まだ発展性のある画像診断法と考えられる.マウスで作ったモノクローナル抗体を用いることによる副作用に関しては,いずれにおいても1度しか行わなかった事もあり,その副作用は認められなかった.

キーワード
PET, DAR, モノクローナル抗体, CEA102, 免疫シンチグラフィ, In-111

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