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書誌情報]
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日外会誌. 98(3): 366-372, 1997
特集
大腸癌-診断と治療の進歩
4.分子病理学的観点からみた問題点と展望
I.内容要旨近年の分子生物学の進歩は,大腸癌の発生,進展に多くの遺伝子変化が関与することを明らかにしてきた.これらの遺伝子変化は,PCR法を主体とする分子生物学的手法により高感度に検出することが可能で,遺伝子レベルでの優れた腫瘍マーカーと考えることができる.この“遺伝子マーカー”を用いて種々の臨床診断に応用しようとするのが“遺伝子診断”であるが,大腸癌の遺伝子診断は病気の発症をポイントとして①発症前診断,②早期診断,③発症後の補助診断に大別される.発症前診断には,家族性大腸腺腫症(APC遺伝子)や遺伝性非ポリポーシス性大腸癌(DNAミスマッチ修復遺伝子)などの遺伝性大腸癌における保因者診断が含まれ,早期診断としては糞便中の剥離細胞におけるp53やK-ras遺伝子変異の検出による大腸ポリープ,大腸癌の診断が挙げられる.また発症後の補助診断としては,生検や手術摘出組織における病理組織診断の補助診断として,悪性度判定や転移,二次発癌などのリスク評価,予後予測などにいくつかの遺伝子マーカーの応用が期待されている.しかしながら,これらの遺伝子診断の実際の臨床応用に際しては多くの問題点がある.それは,①診断法(解析法)に内在する問題点と,②診断を行うこと自体の問題点とに大別されるが,前者には検体採取時の異組織混入(contamination)その他の技術上の問題の他, PCR法の持つ偽陽性,偽陰性の問題などがあり,後者には特に遺伝性大腸癌の際に重要である倫理社会的問題の他,保険適応の問題,医療体制上の問題などが含まれる.本稿では,前者の中で特に分子病理学的観点からみた問題点について,自験例も示して述べることにする.
キーワード
大腸癌, 遺伝子変化, 遺伝子診断, 分子病理学, PCR
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