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日外会誌. 98(1): 46-52, 1997


特集

肺癌治療の現状

9. 小細胞癌の治療Strategy

近畿大学 医学部第4内科

福岡 正博

I.内容要旨
小細胞肺癌(SCLC)の治療は,全身療法である化学療法が基本となる.1970年代には,SCLCに有効な抗癌剤が多く開発され,2~4剤を併用した併用化学療法で著しい腫瘍縮小効果と延命効果がもたらされた.Cyclophosphamide+Adriamycin+VincristineのCAV, VincristineをEtoposide(ETP)に変えたCAE, ETPを加えたCAVE, Cisplatin+ETPのPEが代表的な併用療法で,現在はPEが多く用いられている.その後,交替化学療法が検討され,CAVとPEの交替療法が標準的治療の1つとされた.続いて単位時間当たりの抗癌剤の投与量(Dose Intensity)を増強したWeekly Chemotherapyで優れた効果が報告された.しかし,標準的レジメンとの比較試験では有意差は認められていない.Limited disease(LD)-SCLCにおいては,化学療法に放射線治療を加えたCombined Modality Treatmentの有効性が比較試験のメタアナリシスによって明らかにされた.そして,併用する化学療法にはPE療法が適当であることが示され,併用のタイミングとしては,SequentialよりもConcurrentの方が優れていることがJCOG肺癌内科グループの研究で明らかにされている.また,放射線は,1.5Gy 1日2回(BID)の照射法が優れていることが示されている.予防的全脳照射は,脳再発の頻度を減少するが,生存期間の延長には寄与しないとされているが,LD-SCLCでCRの得られた症例に24~30Gy照射するのが一般的である.これらの治療線略の進歩によって,LD-SCLCではMSTが20カ月以上,3年生存率も30%を超え,ED-SCLCにおいてもMSTが10カ月を超えるまでに改善している.新しい抗癌剤の導入によって治療成績がさらに向上することが期待される.

キーワード
Small cell lung cancer, Chemotherapy, Dose intensity, Combined modality treatment, Prophilactic cranial irradiation

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