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日外会誌. 98(1): 36-40, 1997


特集

肺癌治療の現状

7.肺癌に対する光線力学的治療

東京医科大学 第1外科

加藤 治文 , 奥仲 哲弥 , 小中 千守

I.内容要旨
内視鏡レーザー治療,特にPhotofrinと低出力レーザーを用いた光線力学的治療法は,選択的,低侵襲な癌治療法として1994年10月に厚生省の認可を受け,1996年4月には早期癌に対して保険診療が可能になった.肺癌に対するPDTには,1.中心型早期癌の根治治療,2.進行癌に対する姑息的治療,3.多発肺癌の第一選択治療,4.縮小手術を目的とした術前療法がある.これら中心型肺癌に対するPDTの適応と問題点について検討を加えた.方法は,Photofrin(日本レダリー(株))を2.0mg/kgの割合で静注した48時間後,レーザー光を直径400μmの石英ファイバーに誘導し,気管支ファイバースコープの生検チャンネル内を通して病巣に照射する.630nmの赤色光を発生するレーザー装置としては,パルス波であるエキシマ・ダイ・レーザー(浜松ホトニクス(株))が用いられている.我々の教室では1980年よりPDTの臨床応用を開始し,1996年6月現在までにPDTを施行した肺癌症例は248例(296病巣)で,男性234例,女性14例で,年齢分布は36~85歳であった.臨床病期は早期癌83例,I期34例,II期10例, III期97例, IV期24例であった.治療効果は,全体で完全寛解(CR)が125病巣(42.2%)に得られ,部分寛解(PR)は168病巣(56.8%),無効(NR)は3病巣(1.0%)であった.また,現在評価可能な83例(104病巣)の早期癌に対する治療成績では,CRが87病巣83.7%に得られた.評価可能な75例における5年生存率は68.4%であった.
今後,診断技術の進歩並びに社会の高齢化を鑑みると,従来の治療法では対応できない症例や,quality of lifeを考慮すべき症例の増加が予想される. Photofrinならびにエキシマダイレーザーが認可されたので,PDTは今後早期肺癌に対する有力な治療法として地位を確立するものと思われる.

キーワード
光線力学的治療法, 低出力レーザー, 腫瘍親和性光感受性物質, 肺癌


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