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日外会誌. 98(1): 31-35, 1997


特集

肺癌治療の現状

6.肺癌に対する縮小手術

兵庫県立成人病センター 胸部外科

坪田 紀明

I.内容要旨
肺癌に対する拡大区域切除の共同研究途中経過を報告すると共にlimited operationの概要とLCSGのrandomized studyに言及した.グループスタディは以下の要領で行われた.適格症例は胸部写真上の腫瘍径が2cm以下の臨床診断N0末梢発生非小細胞肺癌である.これに対し隣接肺を含んだ区域切除を実施したがその際,術中迅速診断を多用した区域支,葉気管支及び縦隔のリンパ節検索を行った.リンパ節転移などによりLimited operationの実施が望ましくないと判断された場合には術式を変更した.1992. 1~1994. 12までに55例が登録された.上縦隔リンパ節の郭清は36例に,samplingは19例に行われた.肺の切離方法は術者に任せられ,腫瘍端と切離面の距離は24±10mmとなった.1996年8月までに5例が死亡した.内訳は術後の標本検索で切離線との距離が不十分と思われていた症例に局所再発をみた1例と急性心筋梗塞,食道癌術後,脳梗塞,術対側肺内転移による各1例で,前3者に再発を認めず,最後者についても本術式との因果関係は不明である.残り50例は再発の徴なく生存中であるが,その中には迅速診断は陰性であったN2例とN1陽性の各1例が含まれた.これまでの成績は末梢発生早期癌に対する本術式成立の可能性を示唆するものであるが,その実施には,①術中の十分なリンパ節と胸腔内検索による不適格例の排除,②腫瘍一切離面間距離の確保の2点の重要性が確認された.

キーワード
肺癌, 縮小手術, 小型肺癌, 拡大区域切除, リンパ節郭清

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