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日外会誌. 97(12): 1097-1108, 1996


総説

サイクロフォスファミド誘導性免疫寛容

国立病院九州医療センター 心臓血管外科

真弓 久則

I.内容要旨
マウスをレシピエントとした同種または異種(ラット)のドナー細胞の静脈内投与とそれに引き続く(通常2日後)サイクロフォスファミド(CP)の腹腔内一回投与により,同種,異種臓器に対する様々な程度の免疫寛容が成立する.我々はこのcells-followed-by-CP systemにより長期的に皮膚移植片が生着する場合(たとえばマイナー抗原のみ異なる同種間)の経時的立体的な機構として,(1)clonal destruction:抗原刺激を受けて分裂する成熟T細胞の選択的破壊,(2)peripheral clonal deletion:末梢性キメラの成立に伴う末梢でのclonal deletion,(3)intrathymic clonal deletion:胸腺内キメラの成立に伴う胸腺内でのclonal deletion,(4)clonal anergy:末梢での強い抗原刺激によって生ずる成熟T細胞の無反応性,(5)suppressor T cells:特に寛容安定期から末期に強い活性の見られるadoptive transfer可能な抑制性T細胞の5者を同定した.一方,特に主要組織適合抗原およびマイナー抗原が異なる同種間,あるいは異種間の様ないわゆる“hard barrier”の組合せにおいてはclonal destructionの副産物として生ずる“split tolerance”の状態に注意を要する.即ち,高分裂型の成熟T細胞はclonal destructionを受けて破壊され全体としての寛容が成立するが,低分裂型の成熟T細胞は寛容誘導後にも感作された状態で残存し,最も敏感な皮膚移植片などはこれにより拒絶しうる.このようなsplit toleranceの状態を最小限に止め皮膚移植片の長期生着を可能とするためには,抗原細胞,CP等の抗腫瘍化学療法剤,それらの投与量,時期,ルート,併用する免疫抑制剤の選択とその投与時期,寛容誘導急性期のレシピエント保護のための補助療法などすべてが重要である.

キーワード
chimera, split tolerance, T-cell receptor, clonal deletion, clonal anergy

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