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日外会誌. 97(11): 997-1002, 1996


特集

臓器移植

9.肺および心肺移植

東北大学 加齢医学研究所呼吸器再建研究分野

近藤 丘 , 藤村 重文 , 斉藤 亮 , 松村 輔二 , 大浦 裕之 , 広瀬 正秀 , 杉田 真 , 佐渡 哲 , 箕輪 宗生

I.内容要旨
肺移植は不可逆的なびまん性肺疾患に対する治療として欧米においてはすでに確立され,最近増加傾向が鈍化してはいるものの,年間約1,000が施行され,すでに5,000例以上の症例が集積されている.一方,心肺移植も手技的には確立されているが,ドナー不足の現状や術後成績の問題からその適応はかなり限定され,症例数の増加はあまり見られない.
肺移植に関連した問題としては,肺保存,移植後の肺水腫,拒絶反応の診断,慢性拒絶反応,慢性的なドナー不足などがあげられる.肺保存については保存液の改良により,基礎実験においては24時間程度の保存が可能とされ,移植後の肺水腫については,その一翼を担っている再潅流傷害の機序の解明と対策が進んでいる.しかし,拒絶反応の診断についてはいまだに経気管支肺生検による組織診断が決め手であり,非侵襲的で確実に診断できる方法は確立されていない.慢性拒絶反応に起因すると考えられる閉塞性細気管支炎についてもさまざまな角度からのアプローチがなされているが,再現性高く発現する動物モデルが確立されておらず,その対策は困難を極めている.ドナー不足は肺に限らず,臓器移植全般の深刻な問題となっているが,これに対しては心停止ドナーからの肺移植や異種移植の基礎的な研究が精力的に行なわれている.
国際登録の肺移植成績をみると,5年生存率は50%足らずであり,まだまだ改善の余地が残されている.保存や肺水腫といった問題の解決により,その成績の飛躍的な向上が期待できる.

キーワード
肺移植, 心肺移植, 肺保存, 拒絶反応

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