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日外会誌. 97(11): 984-989, 1996


特集

臓器移植

7.膵・ラ氏島移植

東京大学 医学部第2外科

窪田 敬一 , 幕内 雅敏

I.内容要旨
膵移植は主にI型糖尿病を対象とした治療法であり,血管吻合を用いた臓器移植とラ氏島移植に分類することができる.血管吻合を用いた膵移植は年々施行症例数が増加しており,1年患者生存率91%,1年グラフト生着率71%になるに至った.膵液処理法により,腸管誘導法,膀胱誘導法,膵管充填法に分類されるが,膀胱誘導法による膵腎同時移植症例が多い.膀胱誘導法は尿中アミラーゼ,尿細胞診により拒絶診断が可能なため,他の2手技より良好な1年グラフト生着率が得られている.シクロスポリン,アザチオプリン,ステロイドにATG,ALG,OKT3などを併用した4剤併用療法が主体であったが,FK506など新しい免疫抑制剤も使用可能になっており,さらに膵移植成績が伸びる可能性がある.一方,膵ラ氏島移植は効率良くラ氏島を分離することが可能になり,積極的に臨床応用されるようになった.しかし,1人のドナーから採取したラ氏島数では糖尿病状態に改善することは困難であり,実際には複数のドナーが必要となっている.ブタ胎児ラ氏島を用いた異種ラ氏島移植も施行されるようになり,今後のドナー不足を解消できる可能性がある.しかし,拒絶診断法,免疫抑制療法など改善しなくてはならない点が残されている.現時点で血管吻合を用いた膵移植はI型糖尿病の治療法として確立されたと言えるが,ラ氏島移植はまだ十分な成績が得られておらず,今後臨床例の増加とともに手技が改善されれば,I型糖尿病に対する有効な治療法になる可能性がある.

キーワード
膵移植, ラ氏島移植, 膵腎同時移植, 膀胱誘導法, 異種移植

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