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日外会誌. 97(10): 932-935, 1996


症例報告

体位変換により画像が大きく変化した右上葉肺癌 (lung torsion)の1例

名古屋徳洲会総合病院 外科

井戸 弘毅 , 利光 鏡太郎 , 木村 圭一 , 本多 桂 , 鈴木 高

I.内容要旨
体位変換により画像が大きく変化した右上葉肺癌の一例(lung torsion)を報告する.症例は71歳,男性.咳と右胸部痛を主訴に来院した.立位正面胸部単純X線写真では大きな腫瘤を右肺門部に認めたが,臥位で腫瘤は大きく頭側に移動し,右側臥位では肺門に接していた腫瘤影は右上肺野を占めた.試験開胸術を施行したところ,腫瘤は右上葉の扁平上皮癌で上幹気管支は完全に閉塞され,腫瘍より末梢側は無気肺となっていた.また,右上葉は中下葉とのparenchymal bridgeが欠損していた.これらにより,右上葉は体位により大きく変位できたと考えられた.このように病変を有した肺葉が正常と位置を変える現象はlung torsionと呼ばれ,その成因の多くは手術や外傷に関連したものであり本症例のように扁平上皮癌に合併した報告は少なく,極めてまれな症例と考えられた.

キーワード
lung torsion, 体位変換, 右上葉肺癌

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