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日外会誌. 97(10): 923-925, 1996


総説

腹腔鏡下胆囊摘出術の導入:北京滞在記

九州大学 医学部第1外科
現 下関市立中央病院 外科

吉田 順一

I.内容要旨
私は国際協力事業団から北京にある日中友好病院における腹腔鏡下胆嚢摘出術(LSC)の技術指導を拝命し,1995年8月13日北京に着く,本院は1984年に開院し,総病床数は1,300である.一方,外科の歴史において,腹腔鏡下手術は術野を多数で共有し,判断し,処置をする点,さらには見学者に詳細を供覧する点において革命的である.しかし中国の伝統的な外科臨床において,これらは外科医の中華思想,さらには長幼の序を尊重するアジア的風習に相反する.そこで先ず若手の医師を中心とした内視鏡外科のチーム造りを図り,同時に磨酔科と手術部に協力を求める.8月21日の第1例から私は助手として手術につき,小切開によるトロカー挿入を指導する.LSC初期にも拘わらず,胆石発作から日数が浅い症例に直面する.したがってCalotの三角における剥離操作の注意点など念入りに説明する.またEndoflexTM retractorが癒着の強い症例にても重宝がられる.
外科医個人の権威あるいは面子を重んじながら,新しい手術形態を成功させるために個人が折れてもチームとして任務遂行にあたる必要性を説く.9月10日に帰国の途につくまで8例のLSCを行う.悠久の歴史の首都にあり,まだ若いこの基幹病院において,腹腔鏡手術という新しい潮流が根付くことを切に祈る.

キーワード
腹腔鏡下胆囊摘出術, 国際協力, 中華人民共和国


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