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日外会誌. 97(10): 900-905, 1996
特集
大動脈解離の治療の現況
急性解離の手術適応と術式の選択変遷と最近の動向
I.内容要旨発症初期に非常に高い死亡率を示す急性大動脈解離に対して,外科的治療によって生存率の向上に努めたのはDeBakeyが最初である.彼は同時にその経験から,解離には異なった病態が存在することを認識して卓越したDeBakey分類を提唱した.この分類は予後と密接に結びついているだけでなく,その後の治療指針の基礎となった.
本邦における統計からも明らかなように,急性解離による初期の高い致死率は心タンポナーデの合併によるので,上行大動脈領域に解離を認めるいわゆるStanford A型に対しては,緊急的に積極的に外科治療が現在行われている.一方解離は複雑な病態を示し,それに伴ってさまざまの合併症を惹起するので,これらの合併症を有する症例の多くも手術対象となる.
DeBakeyはその最初の論文から外科治療の基本として人工血管による置換術を提唱しているが,その後までさまざまの術式が行われてきた.しかし現在では本邦においても以下のことが合意されて日常臨床に取り込まれている.(1)上行・弓部に解離腔を有する症例に対して緊急手術で対処する.(2)術式は解離口の切除を含んで上行大動脈領域の人工血管置換術を原則とする.(3)弓部大動脈に解離口を有するいわゆる弓部解離に対しては,上行・弓部同時置換術を施行する.(4)合併する大動脈弁閉鎖不全(Dissection AR)に対しては,弁つり上げ術による修復を原則とする.
近年外科技術の発達に伴い大動脈解離においてもより根治性の高い術式の採用が求められている.その一つの表れとして,Stanford A型解離に対して上行・弓部同時置換術がある.この術式は解離の病態をA型からB型への転換を意図したものであり,予測される遠隔期の病変に対処したものである.本術式の採用は手術成績との兼ね合いにおいて将来への検討課題であろう.
キーワード
急性大動脈解離, 手術適応, 外科治療, 上行・弓部同時置換術
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