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日外会誌. 97(9): 787-790, 1996


症例報告

妊娠後期に発症した肝鎌状間膜ヘルニアの1例

国立小倉病院 外科

佐藤 典宏 , 御木 高志 , 豊永 敬之 , 許斐 裕之 , 石光 寿幸 , 永渕 一光 , 松本 伸二 , 川上 克彦

I.内容要旨
内ヘルニアの中でも極めて稀な肝鎌状間膜裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は27歳女性.妊娠38週5日目に突然心窩部痛が出現し,腸閉塞症の診断にて緊急入院となった.入院時腹部は膨満し,上腹部を中心に強度の圧痛を認めた.白血球数は12,400/mm3と上昇していた.腹部単純X線では横隔膜直下に鏡面像を形成する小腸ガス像を認め,腹部超音波検査において肝臓と腹壁の間に拡張した腸管像が描出された.入院後も疼痛が増強し絞扼性イレウスが疑われたため,帝王切開術を兼ねた緊急開腹術を行った.開腹時,肝鎌状間膜の肝臓付着部に鶏卵大ほどの欠損孔が存在し,ここより回腸が約60cmにわたり嵌入し,絞扼されていた.肝円索を切離して絞扼を解除したが,腸管の阻血性変化は改善しなかったため約70cmの腸切除を要した.本症例では肝鎌状問膜の先天的欠損部に,妊娠子宮により圧排された小腸が嵌入し,絞扼性イレウスを発症したと推察された.

キーワード
肝鎌状間膜ヘルニア, 絞扼性イレウス, 妊娠

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