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日外会誌. 97(9): 765-770, 1996


特集

外科的侵襲と生体反応

III.外科的侵襲と臓器不全
6.腎臓

千葉大学 医学部救急医学

平澤 博之 , 菅井 桂雄 , 織田 成人

I.内容要旨
外科的侵襲による腎機能障害は,従来侵襲による腎血流量の低下がその主因であると認識されていた.しかし救急蘇生法,とくにfluid resuscitationが進歩した現在ではそのような機序により侵襲に続発する腎不全は極めて稀であり,多くの場合は侵襲により発症したSIRS(systemic inflalnmatory response syndrome)が重症化して発症してくるものである.またこのようにはして発症してくる腎不全の大多数はMOF(multiple oregan failure)の一分症として発症してくるものである.
SISRSに続発して発症してくるMOFの一分症としての急性腎不全の病態生理として重要な役を果たしているのは,cytokineをはじめとする各種のhumoralmediatorによる腎構成細胞の直接的な障害と,腎臓内での組織酸素代謝の失調であると考えられるので,外科的侵襲による腎不全の治療や予防に関しては,この二つの因子に対する対策を中心に考えるべきである.
また急性腎不全の治療に関しては,従来より血液浄化法がその中心的役割を担ってきたが,最近では持続的血液浄化法,とくにCHDF(持続的血液濾過透析)が第一選択となってきている.しかし血液浄化法はあくまでも腎不全を伴うMOFへの集中治療の一環と位置付けるべきでる.またこのようなMOFの治療においては不全臓器を形成している細胞の機能不全に対する治療を第一義的に考えるべきである.そのような観点からもCHDFは血中のcytokineをはじめとするhumoral mediatorを除去し,更なる不全臓器の発症を予防する効果も期待できるので,侵襲に伴う腎不全の治療において極めて有用であるといえる.またCHDFの際の抗凝固剤による出血性合併症に関してはnafamostat mesilateを用いること,あるいは必要に応じてanticoagulantless continuous hemodialysisを施行することでほぼ解決できたといえる.

キーワード
急性腎不全, 多臓器不全 (MOF), humoral mediator, 持続的血液濾過透析(CHDF), SIRS(systemic inflammatory response syndrome)

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