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書誌情報]
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日外会誌. 97(9): 752-758, 1996
特集
外科的侵襲と生体反応
III.外科的侵襲と臓器不全
4.肝臓
I.内容要旨外科手術や外傷などの過大な外科的侵襲に伴って,神経内分泌系の反応が起きるが,これについては視床下部,下垂体,副腎皮質系ホルモンを始めとして早くから多くの研究がなされてきている.これらの効果は主として代謝,循環器系に及び,肝臓においても糖,脂質,蛋白代謝が異化の充進に向かう.さらにnorepinephrineを始めとするcatecholamineは,肝臓の循環にも影響する.そのために過大侵襲後早期には多量の失血を伴う場合には当然のこと,そうでない場合にも肝臓のmitochondriaの酸化還元状態は酸素とエネルギー基質の供給不足のために還元に傾き,エネルギー危機に陥る.この侵襲後早期の肝エネルギー危機の重大さは従来認識されていた以上に深刻なものである.このため,肝臓が営む多くの機能が障害され,肝不全からさらに多臓器不全に陥る危険性も大きくなる.肝細胞の予備能が大きいため,従来はこのエネルギー危機を的確に把握できなかったが,AKBRにてその度合いを知ることが出来る.重度外傷後,赤血球崩壊によるbilirubin負荷が増えるが,肝エネルギー危機から回復しないうちは,抱合型bilirubinを濃度勾配に逆らって毛細胆管へ排泄することが障害される.これが外傷後黄疸の一因と考えるが,過大侵襲を伴う術後の黄疸の一因でもあろう.
また最近では局所的に,あるいは短時間作用する生理活性物質としてcytokine,eicosanoid,superoxideなどが侵襲に伴って種々の細胞から遊離され,これらも肝細胞障害を引き起こすことが知られてきている.このような状況の下,侵襲後の肝不全に対する治療,予防も原因や肝臓への負荷の除去,栄養,代謝面での管理のみならず,各種メディエーターの阻害や除去も注日され,多方面からの試みがなされている.
キーワード
肝ミトコンドリア, AKBR, エネルギー代謝, 肝循環, カテコラミン
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