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日外会誌. 97(9): 745-751, 1996


特集

外科的侵襲と生体反応

III.外科的侵襲と臓器不全
3.心臓

1) 川崎医科大学 救急医学
2) 聖路加国際病院 救急部

鈴木 幸一郎1) , 河野 匡彦1) , 青木 光広1) , 仁科 雅良1) , 荻野 隆光2) , 小濱 啓次1)

I.内容要旨
外傷,出血,感染などの外科的侵襲は,生体に大きな影響を及ぼし,しばしばショックや多臓器不全を引き起こす.ショックにおける心臓機能障害 特に心収縮性障害については,敗血症患者やエンドトキシンショックの研究から明らかになってきた.病原体の侵入に伴う生体の過剰な炎症反応が微小循環障害や臓器障害を引き起こすという仮説のもとに,種々の炎症性サイトカインが心臓に及ぼす影響も調べられている.また,一酸化窒素(NO)が心臓に対して陰性変力作用を持つことも最近明らかにされ,サイトカインの心筋抑制作用は血管内皮細胞や心筋細胞で過剰に産生されたNOによるものではないかと疑われている.同様の炎症反応は,敗血症以外にもいわゆるsystemic inflammatory response syndromeの原因となる出血,熱傷,アナフィラキシー,腸管虚血などでも起こりうるものと考えられる.
このように出血性ショックや重症熱傷の経過中には心収縮性の低下が起こっている可能性があるが,臨床上使用される心収縮性指標の多くは心臓の負荷条件に影響されるため,その観察を困難なものにしている.また,心収縮性低下が病態の進行にどのように関与しているのかも明らかでない.
そこでここでは各種ショックにおいて心機能はどう変化するのかを過去の報告をもとに検討した.感染,出血,熱傷では心収縮性は低下しているようであり,循環維持のためには輸液・輸血などによる前負荷の保持に加えドブタミンなどのカテコールアミン投与により心機能回復を図る必要がある.臨床上は心拍出最,血圧,臓器血流などの循環指標以外に酸素代謝指標(酸素運搬量,酸素摂取量,酸素摂取率など)を用いた治療方策が必要であり,ここでもショックに伴う心機能障害を考慮した適切な心機能保持が要求される.

キーワード
心収縮性, 敗血症性ショック, エンドトキシンショック, 出血性ショック, 熱傷ショック

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