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日外会誌. 97(9): 721-725, 1996


特集

外科的侵襲と生体反応

II.外科的侵襲と全身反応
4.免疫応答

熊本大学 医学部第2外科

広田 昌彦 , 小川 道雄

I.内容要旨
免疫応答は特異的な抗原に対する反応としての特異的(獲得)免疫と炎症反応に代表される非特異的(自然)免疫の2つに大別される.特異的免疫応答は外来の物質(抗原)を自己由来の物質と区別して排除するための防御システムで,B細胞,T細胞等のリンパ球が反応の中心となる.一方,侵襲が加わると,その原因の種類にかかわらず一定の非特異的な炎症反応が起こるが,これが非特異的免疫応答である.これにはマクロファージや好中球が主に関与する.
最近,侵襲に対する非特異的な免疫応答がSIRS(systemic infiammatory response syndrome:全身性炎症反応症候群)という概念で注目されている.非特異的な免疫応答,すなわちSIRSは,局所で単球一マクロファージ系細胞から産生されたサイトカイン(主にTNFとIL-1)によって血管内皮細胞と好中球が活性化され,全身的な炎症反応が惹起されている状態である.SIRS状態となっても,大多数は臓器不全を発症することなく経過し,回復する.しかし,SIRSの経過中に新たな侵襲の負荷(second attack)などが起こると,それらを契機にして臓器障害,臓器不全が生じる.SIRSを臓器障害,臓器不全発生のwarning signとしてとらえ,治療開始時期が遅れないように留意すべきである.

キーワード
外科的侵襲, 免疫応答, SIRS, 全身性炎症反応症候群, サイトカイン

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