[書誌情報] [全文PDF] (4162KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 97(8): 683-690, 1996


その他

食道表在癌の治療
-第49回食道疾患研究会,食道表在癌アンケート集計報告-

1) 第49回日本食道疾患研究会当番世話人(滋賀医科大学第一外科) 
2) 日本食道疾患研究会会長 

小玉 正智1) , 掛川 暉夫2)

I.内容要旨
1990年~1994年までの5年間の問に外科的あるいは内視鏡的切除が行われた術前未治療の食道表在癌を対象としてアンケート方式による調査を行い,143施設,2,418症例の表在癌の集計を元に,食道表在癌の病理組織学的所見の見直しと治療法の選択についての再検討を行った.なお深達度は,基底膜をわずかに破っているものまでをm1,粘膜筋板にきわめて接近していたり浸潤しているものをm3,その中間をm2と定義した.一方sm癌は粘膜下層を3等分して上より順にSm 1,2,3として亜分類した.その結果リンパ管侵襲(ly)は,癌浸潤が粘膜筋板に達するようになると飛躍的にly陽性頻度が増加する傾向にあった.リンパ節転移率も同様に,m1,m2では各々0%,3%の転移率にすぎなかったのに対して,m3以降深達度が増すにつれ増加の傾向を示した.肉眼的形態としては,0-Iあるいは0-IIIの成分を含むものではその大半がm3以上であった.m1+m2,m3+sm1,sm2+sm3の3群における術前予想深達度の正診率はおのおの86.7%,74.0%,78.0%であった.
食道表在癌に対する内視鏡的粘膜切除術(以下EMR)は76%の施設がml~m2の表在癌に限定して行っていたが,85%の施設が病巣の大きさに関しても何らかの制限を設けていた.分割切除に関しては,病巣の大きさが2cmを越えるものでは94%が分割切除となっていた.内視鏡的粘膜切除術の合併症は約6.8%の症例に認められ,穿孔(2.5%),狭窄(2%)および出血(1.5%)が代表的なものであった.治療成績に関しては,m3癌の予後はm1やm2癌との間に有意差を認めず良好なものであったが,sm1では粘膜癌と比べ,有意に生存率が低下していた.しかしsm1症例に行われた食道抜去術症例やEMR症例の予後は,いずれも右開胸症例とかわらない生存率を示しており,m3やsm1症例に対する治療法の選択が今後の課題であると考えられた.

キーワード
食道表在癌, 内視鏡的食道粘膜切除術, 外科的治療


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。