[書誌情報] [全文PDF] (3364KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 97(8): 642-647, 1996


特集

胆道拡張症と胆道閉鎖症-最近の治療の動向-

胆道閉鎖症の予後改善策

1) 群馬県立小児医療センター 
2) 国立小児病院 外科

土田 嘉昭1) , 本名 敏郎2)

I.内容要旨
胆道閉鎖症の黄疸消失率は現在日本全体の平均で約70%である.しかし,筆者らの施設並びに1~2の施設では90%を僅かに超える黄疸消失率が得られている.ここで,黄疸消失率とは術後3~12カ月の間,血清総ビリルビン値が1.2mg/dl以下を維持できる症例の比率であり,永久に全治する症例の比率では無い.
本稿では黄疸消失率,ひいては,治癒率の向上に資するにはどのような工夫が必要であるかを述べた.筆者らの経験から,①肝授動術による正確な肝門部剥離操作・吻合操作,②沢口法(完全外胆汁瘻の設置),③逆流防止弁の設置,④迅速な再手術,⑤抗生物質と利胆剤の長期投与,⑥術後3カ月間の入院,などの方針をモットーとして治療に当って来たが,②と④については,肝移植術が可能となって来た現在出来るかぎり避ける方針である.最も重要な点は①の正確な肝門部剥離操作と吻合操作であり,その要点について述べた.吻合口は思い切って大きくとることとし,縫合のためにかけた糸や腸粘膜が胆汁流出が予想されるポイントを決してふさがないようにすることが肝要である.このためには,肝授動術による直視下の綿密な手術操作が大切である.又,術後,胆管炎その他種々の合併症が起こりやすい不安定な3カ月間は大事をとって入院していることが望ましい.
胆道閉鎖症に対する黄疸消失率が70%でよいとする小児外科医とこれを90%に引き上げようとする小児外科医とではこのような予後改善策に対する考え方が異なるのは当然である.

キーワード
胆道閉鎖症, Kasai手術, 肝門部空腸吻合術, 逆流防止弁

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。