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日外会誌. 97(8): 626-630, 1996


特集

胆道拡張症と胆道閉鎖症-最近の治療の動向-

肝内結石を有する先天性胆道拡張症の外科治療

東京女子医科大学 消化器外科

羽生 富士夫 , 吾妻 司 , 吉川 達也

I.内容要旨
過去27年間に東京女子医科大学消化器外科で治療した先天性胆道拡張症(癌併存例を除く)は141例あり,胆管形態別にみると戸谷I型93例,II型1例,III型2例,IVA型42例,V型の末梢胆管型3例であった.各型別の肝内結石併存症例数はI型1例,IVA型18例,V型の末梢胆管型2例であり,II型およびIII型では肝内結石を認めた症例はなかった.手術既往のない症例は2例のみであり,いずれもIVA型であった.これらの症例では総胆管結石が原因と考えられた.手術既往を有する症例は19例あった.このうち胆嚢摘出術後の症例は2例あり,いずれもV型の末梢胆管型であった.バイパス手術後の症例は5例あり,いずれもIVA型であった.先天性胆道拡張症に対する基本術式である肝外胆道切除,胆道再建が施行されたにもかかわらず術後に肝内結石が形成された症例は12例あった.胆管形態をみるとI型が1例,IVA型が11例であった.12例中3例では胆管消化管吻合部の狭窄が,4例では肝外胆管の追求切除が不十分であったことが結石形成の原因と考えられた.このような問題を解決するため,教室では先天性胆道拡張症に対して肝外胆道切除,胆道再建を行う場合,肝外胆管を十分に追求切除し,肝門部における胆管狭窄を遺残させないようにしている.また,胆管消化管吻合に際しては,吻合口が十分な大きさになるように,必要に応じて左右肝管を1本に形成したり,長軸方向に切開したりしている.残りの5例では肝外胆道切除,胆道再建は手技的に問題なく施行されたが,肝内胆管に拡張や狭窄が遺残したために肝内結石が形成されたと考えられた.5例中4例には結石の存在部位に応じた肝切除を施行したが,このうちの2例では結石が再発している.肝内胆管の拡張や狭窄が偏葉に限局している場合には肝切除が適応となるが,両葉の肝内胆管に高度の拡張や狭窄を有する症例では,現在のところ根治的な治療法はなく術後も肝内胆管に拡張や狭窄が遺残する.このような症例では術後の繰り返す胆管炎や肝内結石形成により病態がさらに複雑になり治療に難渋することがあるため,厳重な経過観察が必要である.

キーワード
先天性胆道拡張症, 肝内結石胆道再建

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